事務局長エッセイ「Risk-Taking」

寒かった冬がようやく終わり、暖かい春が訪れ、「新たなスタート」に向けた気持ちの高揚を感じているところです。加えて、私自身、日本で春を迎え、咲いている桜を見るのは17年ぶりで、今まで過ごした数ある「春」に比べて格別にイベント感のある「春」を過ごしています。他方、海外赴任中はあまり気にならなかった「花粉症」が日本ではしっかり復活し、やや残念な思いもしています。

 さて、本題です。「信頼で世界をつなぐ」。この言葉はご存知の方もいらっしゃると思いますが、独立行政法人国際協力機構(JICA)のビジョンです。私も、国際協力活動において、相手国政府や現地の人々との「信頼関係」は不可欠であると強く感じています。「信頼関係」が存在しない、または不十分な状態では、相手方からのコミットを十分に引き出せず、表面的な活動に終始してしまい、本質的な問題解決にはつながらないことが多いと思います。

 翻って、私たちの日頃の業務においても、間違いなく「信頼関係」は重要です。幸い、当協会においては、これまで組織を支えて来られた方々のおかげで、すでに多方面から強い「信頼」を得ていることは実感しております。私たちはそれを失墜させないように努力すると共に、さらにこの「信頼」の輪を広げていくことを考えないといけません。

 それでは「信頼」を得るために、私たちはどのようなマインドを持つべきなのでしょうか。もちろん、いつも利他性を優先し当事者意識を持って行動することは大前提になると思いますが、この場を借りて恐縮ながら私の持論を披露させて頂きます。「信頼」を得る近道は「リスクを取ること」だと私は考えています。簡単に申し上げると、「信頼を得たければ、先ず相手のことを信頼しましょう」ということです。自分のことを疑っている人に対して信頼感を持つ人はあまりいないことは、何となく理解できると思います。無闇に誰でも信じる「お人好しになりましょう」と言っているわけではなく、細かい不確定要素ばかりを気にして歩み寄っていけない(リスクを取れない)と「信頼関係」は築けないと言いたいのです。これは、日頃の仕事やプライベートでの人間関係にも通じることですし、異文化環境の中ではその傾向はさらに強くなると思います。

 しかし、よく考えてみますと、わざわざ私がここで偉そうに述べるまでもなく、青年海外協力隊等に参加して、海外でのボランティア活動を経験した方々は、この関係性を体現しているとも言えます。全く知らない場所へ出向き、一定期間、異文化の中で生活・活動するという、ある意味大きな「リスク」を取ることによって世界各地の草の根レベルで「信頼関係」を築いて来ているのです。そして、その「信頼」の輪はさらに広がり続けています。「Risk hedge」も時には重要ですが、「Risk-taking」のマインドを忘れずに活動したいと思います。(馬田 英樹)

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